top of page

自転車で走る

   新しい自転車を買った。

   春の陽光が遊び始めた2月中旬に届いた。アパートの玄関先で組み立て、前かごにビニール傘とペットボトルを放り込み、いつもの街に出かけた。右手に小さなコンデジ、タバコと財布しか入っていないリュックを背負って、気ままに走った。

 

   ルールを決めた。Uターンしない。走りながら撮る。2000枚を撮り終えるまでは写真をチェックしない。自由になるためのルール。

 

   2000枚のうち何枚の写真が生存競争に勝ち残るのか。そもそも写真に生も死もないわけだが。ともかく、量からすくい上げられる質の可能性を探ることにした。数学的ギャンブル、希望のメカニズム。確率という名のゲーム。

   本編は、自転車を走らせながら流れる景色を写したものです。1日100カットを20日、というノルマを設定しました。作画しないように淡々と撮ったものですが、偶然にも「作画成立してしまったもの」を砂金を採取するように選り分け、集めてみました。

撮影期間 2019年2月18日〜2019年4月7日

Epilogue

   自転車で走ると、風になるときもある。特に春は。アルチュールランボーの影とすれ違ったような気がした。春の錯覚。

bottom of page